犬はなぜ問題行動をするのか? ― 根本原因から考えるしつけの本質

問題行動は“犬の困りごと”のサイン

多くの飼い主は、問題行動を「飼い主を困らせるためにしている」と考えがちですが、犬の行動は常に理由に基づいています。むしろ 問題行動は犬からのメッセージ と考えるべきです。
基本的なニーズが満たされていない
犬には本能的欲求があります。
- 運動したい
- 探索したい
- 何かを噛みたい
- 社会的なつながりを持ちたい
これらが満たされないと、エネルギーが余り、吠えや破壊行動などに発展します。運動不足や孤独感が続くと、吠え癖や分離不安の原因になるのは典型例です。
ストレスの蓄積
犬もストレスを感じます。刺激が多すぎる環境、不安な状況、家庭内の緊張感など、日常のストレスが積み重なると、犬は吠えたり・噛んだりと、不安定な行動を取ることがあります。
体調不良や痛み
気付きにくいだけで、問題行動の一因が「痛み」であるケースは少なくありません。関節痛や口内の違和感、内臓疾患などがあると、機嫌が悪くなり噛みつきに発展することもあります。
人間側のコミュニケーション不足

犬が問題行動を起こすもう一つの大きな理由が、人間が意図しない学習を犬にさせていることです。
うっかり強化してしまう
例えば、犬が吠えるたびに「うるさい!」とかまってしまうと、犬からすれば「吠える → 飼い主が反応する」と学習します。このような偶発的報酬は問題行動を強化します。
指示が不明確
犬にとっての「正解」が曖昧だと、犬は混乱します。飼い主によって態度が違う、状況によって許されたり怒られたりする…こうした不一致は、犬の誤学習の原因になります。
タイミングの悪い叱り
叱るタイミングが数秒遅れるだけで、犬は別の行動と結び付けてしまいます。結果として「何を叱られているのかが分からないまま、ただ怖い思いだけをする」状態になり、問題行動の改善にはつながりません。
犬は「行動して得をしたい」だけ

動物行動学では、犬を含む動物は快を求め、不快を避けるという原則の上で行動すると考えられています。
- 吠えることで不安が減った
- 噛んだら相手が引いた(怖い対象が遠ざかった)
- 飛びついたら撫でてもらえた
- イタズラしたら退屈が紛れた
犬は常にこうした“プラスの結果”を求めて行動しています。つまり、問題行動は犬にとって何かしらの利益を持っているのです。
しつけの本質は「望ましい行動を教え、報われる仕組みをつくる」こと

問題行動をやめさせようとするより、正しい行動を自然に選びたくなる環境(仕組み)づくりのほうが、しつけには何倍も効果的です。
望ましい行動に報酬を与える
- 静かにしているときにやさしく声をかける
- 座って待てたらご褒美をあげる
- 落ち着いてお留守番できたらたくさん褒める
良い行動に注目し、強化することがしつけの基本です。
問題行動を起こせない環境を作る
- 犬がゴミ箱を漁るならフタ付きにする
- テーブルに乗るなら食べ物を置かない
- 引っ張るなら体に合ったハーネスに変える
“問題行動ができない環境”を整えることも立派なしつけです。
エネルギー発散・刺激の調整
散歩や遊びは、問題行動を減らす最も効果的な方法のひとつです。運動だけでなく、嗅ぐ・探すといった探索行動を満たす「ノーズワーク」もおすすめです。
犬の性格・犬種の特性・個体差を理解する

犬種によって本能は大きく異なります。
こうした特性を理解せずに「やめさせよう」とすると、犬にとってはストレスでしかありません。むしろ、本能を満たす活動を適切に与えることが、問題行動の予防につながります。
さらに、同じ犬種でも性格や経験による個体差があります。しつけに“正解の型”はなく、その子に合わせたアプローチが重要です。
体罰を与えるしつけでは問題行動は根本的に解決しない
体罰を与えるしつけは、一時的に行動を止めることはできても、問題の根本解決にはなりません。
むしろ、
- 人に対する恐怖
- 飼い主との信頼関係の低下
- ストレスによる別の問題行動
を引き起こすリスクがあります。
しつけのゴールは「犬を従わせること」ではなく、犬が安心して人間社会で暮らせるように導くことです。
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まとめ:問題行動は“悪”ではなく“サイン”
犬の問題行動は、犬からのヘルプサインであり、コミュニケーションの一部です。
- 犬が何を伝えようとしているのか?
- どんなニーズが満たされていないのか?
- 私たちの関わり方に問題はないか?
これらを考えることで、しつけは単なる「行動修正」ではなく、犬との深い理解と信頼を築くプロセスへと変わります。
問題行動を叱るのではなく、“なぜその行動を選んだのか”を理解し、望ましい行動を自然に選べる環境づくりをしていく。それこそが、犬と人がより良く暮らすための しつけの本質です。
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